一戸建ての住宅のエクステリア・外構を考えるときに、いつも重要になるが『カーポート』の存在。
そうです。あの柱が建っていて屋根のある、あのカーポートです。
車の屋根?お家?と言った方がいいでしょうか。
実はこのカーポート。便利な反面、外構を作るときには、非常にお邪魔虫な場合もあります・・・
では一体どんな場合に便利でどんな場合にお邪魔虫になってしまうのか?
今日のブログでは、『自分のお家にカーポートが本当に必要なのかどうか』を考えるのに役立つ
いくつかのポイントをまとめてみたいと思います。
カーポートがあると良い点(カーポートのメリット)
①車の乗り降りの際、雨に濡れない(濡れにくい)
車の乗り降りの際に雨に濡れない。カーポートを作って最もメリットがあるのがこれだと思います。
カーポートの場合はガレージと違って四方を壁で囲われている訳ではないので、横から雨が降り込んできます。よって正確に言うと、『雨に濡れにくい』ですね。
特に、子育て世代には最高です。ガーデンドクター柴ちゃんも0歳と2歳の二児の父。
屋根の無い賃貸の駐車場から、幼児二人を家の玄関まで運ぶのは結構大変。
雨が降っていたら、親のうち一人は子供を抱いて、もう一人は笠をさして玄関までレッツゴー。
もし土砂降りだったら、家に入るのを待ちます。
そんなときカーポートがあったら、子供をおろして、傘をさしてと言う作業を一人で出来ます。
ああ、カーポート欲しい。今欲しい。
②冬の朝、フロントガラスが凍らない(降雪地帯では雪に覆われない)
これも、冬の朝にはかなり重要です。
今年は暖冬の様なので、名古屋でも冬の朝は必要ないかもしれませんが、私の実家のある守山区の志段味なんかは結構重要。
朝の忙しい時間から、「ヤカン用意しないかん!!!」となるのはかなり焦ります。
また、降雪地帯では屋根がないと朝から車の雪かきをしないといけません。
柴ちゃんは今まで降雪地帯に住んだ事は無いので、その大変さは分かりませんが、想像するに朝出勤する為にはカーポートは必須な気がしますね。
朝から雪かきして出勤できない・・・。
それに、降雪地帯では名古屋で使うような積雪20cmのアルミのポリカ屋根カーポートでは全然歯が立たないので強力な折板カーポートを設置するのがほとんどの様です。
その境界は一体どの変なのでしょうね?調べてみたいな・・・メーカーさん教えてください。
③風雨や熱光線が防げるので車が傷みにくい(洗車の手間が省ける)
三番目は車が汚れにくいという事です。
また、雨風・太陽光線に当たり難くなるので、車の劣化が遅くなります。
私が独身の頃、乗っていたスポーツカー(今はミニバン)をカーポートの下に置いていたのですが、確かに汚れにくかったです。
やっぱりカーポートがあると違うなあ・・・と思ったのを覚えています。
あと、車で使われているのはボディの鉄とその鉄を覆っている塗装だけではありません。
ワイパーのゴムや、樹脂、プラスチック類などは熱や紫外線が大敵。
私、大学の頃はプラスチックに赤外線当てて劣化の研究とかもしてたので、その威力は知っています。
紫外線て、結構強力なんです。
今は、カーポートの屋根の種類に「熱線吸収ポリカ屋根」と言うのがあります。
これは文字通り太陽の熱線を吸収してくれます。
この屋根、機能的に本当に素晴らしくて、下にある車の温度は全く変わります。
私が、お客様に『カーポートを付けたい』と言われたときにお勧めするのはこの屋根です。
熱や紫外線での劣化も考慮してお勧めしています。
また、皆さんも知っての通り、最近の夏は非常に熱い。
ご家庭にある名古屋市の水道メーターで目玉焼きが出来そうなくらい夏は暑くなってしまいます。
暑い車の中に乗り込むのも本当にいやですよね。
熱線遮断ポリカ屋根なら、温度は相当低くなります。
そうなると、カーポートはやっぱりおすすめ。
なんだか、ここまで書いてくると良いことだらけのような気がしてきますが、そんなカーポートでも悪い点はあります。
カーポートがあると悪い点(カーポートのデメリット)
①家の見た目(デザイン)を悪くしてしまう
エクステリアのデザインをするときに、設計者が最も気を使うところは
「カーポートを使うことによって、家の見た目(デザイン)を悪くしてしまう。」
ということです。
もうこれは、どうしようもないです。
やはり車を覆うだけの屋根をつけようとする場合、それなりに大きさと高さが必要になります。
エクステリアと言うものは、大体が前面の道路から見たときの見た目を考えてデザインをする物です。
そのときに半分以上の面積をカーポートが占めると想像してください。
見た目はほぼカーポートです。お家のデザインがどうのこうのというより、カーポートしか見えません。
よって、カーポート自体のデザインが重要になるので、各メーカーさんは一生懸命開発をしてくださって、上の
マイポートネクストなどの格好の良いカーポートが出てきています。
しかし、このカーポート自体がお家のデザインに合うかどうかと言うのが問題なのです。
例えば、こちらのお家の場合は、最初2台分のカーポートを御所望されていましたが、私のたっての願いで1台分にしていただきました。
こちらのお家のデザインの場合は、この直線で構成されたラインがとても大切で、折角それにあわせた外構の壁を作ったとしても、もしカーポートの2台分の屋根がついてしまうと、そのラインの格好良さが台無しになってしまいます。
それは外構設計のプロとしては何としても避けなければいけないところなのです。
だからといって、お客様のご要望を全て無視するわけにはいきません。
そこで重要になるのが、今回のブログの最重要ポイントの
「お客様のお話を徹底的に聞いて、本当にカーポートが必要か考える」ということ。
通勤のスタイルから、車の使用頻度。今の車のサイズに、将来変わる可能性のある車のサイズ。
それにお子様の年齢・自転車の有無・・・
今現在のことから未来の事まで色々とお話を聞きます。
細かく話しを聞いていくと、実際には2台分も要らないかもという可能性も出てくることもあります。
実際、こちらの写真のおうちは今現在は車が一台です。
もし2台分作っていたら本当に無駄でした。
こうして、カーポートが本当に必要なのかを様々な情報を元に検討していく。
特に新築の場合は、「今までカーポートがついていたから、当たり前に必要だと思っていた。」とか
「あると便利だと思っていたから付けようと思っていた。でも、見た目の事まで考えなかった。」というお客様が
かなり多いです。お家って一生のうちで何回も作るものでは有りません。
外構もおうちと同じく、そんなに作るものでは有りません。
よって、お客さまは殆どの方が初めて作ることになるのです。
しかし、我々外構屋はお客様に比べて、かなりの頻度でカーポートを作っています。
よって、そのぶん経験はお客様より豊富です。そこでその経験を活かし、プロのデザインセンスを使って
アドバイスを的確にするのが我々の仕事です。
今、ホームセンターやインターネットで激安カーポート売っていますよね。
実はあの商品。我々の売っているものと中身は殆ど変わらない事が多いのです。
ホームセンターのオリジナル商品で安い!と書いてあっても、実は大手のアルミメーカーと共同開発をしていて、
性能には差が無かったりします。そうなれば安いほうがいいかもしれません。
しかし、ホームセンターや激安カーポート屋さんは的確なアドバイスしてくれるのでしょうか?
多分してくれないと思います。
何故ならアドバイスすると、カーポートが売れなくなってしまう可能性があるから。
商売の真っ当なシステムから考えると、「激安=利益が薄い」なら量を沢山売らないといけません。
量を売るならアドバイスなどしていられません。アドバイスして「それじゃあ止めておこう」となったら大変ですものね。
ましてや、ホームセンターのアルバイトの方に我々のようなアドバイスが出来るとも思えません。
よって、「安さ重視でデザインは考えない。自分で徹底的に考えたからプロのアドバイスも不要。」と言う方には、
激安店やホームセンターでカーポートを購入されるのをお勧めいたします。
②カーポートの柱によって車を収める幅が減ったり駐車の仕方に制限が出る
これは、もうどうしようもないことです。
4本足のカーポートの場合、当然その足にぶつからないように駐車をしないといけません。
これが狭い場合は面倒だったりもします。
それに、両サイドに足が来るので、その幅分は駐車スペースが狭くなる。
上の三協アルミのMシェードは柱の幅が160なので両サイドで320。
32cm狭くなると言うことです。また、スライドドアで無い車両の場合は車のドアを開けなければならないので、それも考慮しておかなければなりません。
折角作ったのに、めちゃくちゃ使い難いではいけませんもんね。
しかし、これは上で紹介したマイポートネクストなどの後方支持型のカーポートを設置することでかなり軽減できるはずです。なんと言っても前に柱がありませんから、駐車はかなり楽。
それにドアの開け閉めも柱を気にしなくても大丈夫。
だったら、全部後方支持型にすればいいじゃない?と思うのですが、やはり値段が高いです。
このあたりも、しっかりお客様の意見を聞いて設計に組み込んでいく事が重要です。
③カーポートに対しての法律的な問題はほぼアウト
以前どこかのブログで書いたような気がするのですが、カーポートは法律的にはかなりグレーな商品です。
言い方が悪いですね。法律を守って作ればなんら問題は無いのですが、法律が守られない場合が多いと表現したほうがいいでしょうか?
日本の建築基準法では「土地に定着する工作物のうち、屋根もしくは柱、壁を有するもの。またそれに付随する門や塀、地下など」を建築物と定義しています。
じゃあ、カーポートはどうなるのかと言うと、屋根もしくは柱を有するものという表現からすると、完全に建築物になります(※法6条2項 防火地域及び準防火地域外において、増築・改築・移転する場合で、その部分の床面積が10平米以内であるときは適応されませんが、10平米以下のカーポートは面積的にカーポートとしての役割を果たせません。)。
建築物となると、「建築物を建築しようとする場合、建築主は申請書により建築確認を受けて確認済証の交付を受けないと建築する事が出来ない。」と言う決まりがあり、これが建築確認申請です。
そのため、大手ハウスメーカーさんでは建築確認申請を受けない場合意外はカーポートを受注しない事がおおいです。
コンプライアンス(法令順守)に反するからですね。
また、建築物である以上、建蔽率にもカーポートの面積が引っかかってきます。
そうなると、ハウスメーカーさんとしては(よっぽど大きな土地の場合意外は)カーポートは建築確認申請から外して、建物だけで申請をするという事になってくるわけです。
では、その後カーポートをつけたい場合は?というと、外構屋さんに丸投げです。
「もう後はしらないから、お願い」ってな感じです。
じゃあ、外構屋さんが建築確認申請するの?というと、私の知っている限りで確認申請を通してカーポートを建てている業者さんはほぼ無いと思います。
何故なら、確認申請にコストが物凄くかかるから。
(例えば10万円のカーポートが3倍、4倍のコストになるとかそんな感じです。)
また、調べてわけでは有りませんが、日本中にあふれかえっているカーポートの95%以上は確認申請を通していないと思われます。そのため、行政も取り締まり出来ない。
一つ取締りしだしたら、日本全国摘発しなければいけませんもんね。
だったら、誰も確認申請通さないとなるわけです。
ということで、法律的には「グレー」だと私は思うのです。
これは、この業界に携わっているものとしては、何ともやるせない気持ちになることです。
メーカー、業界、問屋、そして政府が一体になって解消していかなければいけないと私は思います。
大切なのは本当にカーポートが必要かどうか見極めること
ここまで、カーポートがあると良い点、悪い点について考えてきました。
皆さんは、どう思われましたか?
実はまだ他にも色々と検討しなければいけないことは多く有ります。
それは、土地の形だったり、家の形だったりで、それぞれ違っていたり、使われる方のライフスタイルで変わったりします。
例えば、今は車のコーティング技術が発達しているので、洗車のことだけ考えるなら、カーポートをつけるよりも良いコーティングをしたほうがいいのかもしれません。
また、自転車だってサイクルポートをつけるお金で、何台も自転車(それも新車)が購入できる時代です。
なので、一つの理由でつけるつけないと判断するのでは無く、確りと考えるというのが大切。
そして、我々エクステリアのプロは、「お客さまにとってのベストな判断は一体何なのかを考える手助けをする」そのために存在するのです。
一人で考えるのは不安だなと思われる方は是非、プロにご相談ください。
このブログが「カーポート作りたいんだけどどうしよう?」と思う方のお手伝いが出来たら幸いです。